「普通種べいべ〜」の準備を始めていた頃、「普通種」の企画展があることを発見しました。
神奈川県立 生命の星・地球博物館で開催されている『超(スーパー)普通種展―自然史研究を支える主役たち―』
2023年2月18日〜5月7日
なんてタイムリーなのでしょうか!
これは偶然か?
もしかして普通種のブームが来ている?
行かなくては
普通種に注目する気持ち分かります。
「普通種」って奥深いです。
大事です。
もちろん分かってます。
「普通種べいべ〜」やるくらいですから。
ただ、ちゃんと考えたことあるか?
説明できるか?
こんな企画展があるなら学んでこよう。
ということで行ってきました!
小田原へ、箱根へ
「生命の星・地球博物館」は小田原にあります。
うみむしにはちょっと遠いけど、いざ小田原へ〜(出陣風、小田原城が近いし)
来ました。来ました。(人生3度目かな?)
普通種とは何か
解説と展示標本をよくみていくと、「普通種」というテーマで色々なことが考察されていました。
・地域によって普通種は異なる。気候の違いなど。
「ミンミンゼミは関東地方では都市部でもよく見る普通種だが、近畿地方では山地に生息していて、泣き声は聞けてもなかなか捕まえらない」
「分布の中央では普通種でも、分布の端の方では適した環境から外れていき、徐々に普通には見られなくなっていく」
・撹乱の影響を受けにくい種が生き残って普通種となることもある。これは外来種に多い。
・かつて普通種だったものが、珍しくなることがある。淡水域、湿地、水辺、草地に棲んでいた生き物にこういった例が多い。
「アカトンボ」と呼んでいるのはアカネ属のトンボで、昔は「アキアカネ」が代表的だったが、近年に神奈川県でよく見られているのは「ウスバキトンボ」」
・普通種だと思っていても、外見が似ている複数の種が含まれていることがある。
・在来の普通種だと思っていた種が、いつのまにか外来種と置き換わっていることもある。
「在来のドジョウと考えていたら、中国からの外来種が知られるようになり、過去の標本を改めて調べたら、既に外来種ばかりだった!」
・普通種の中でも学名も決まっていない種がある。
「ギンブナ類は、外見による見分けが難しい。最近の遺伝子を用いた研究では国内に6系統あるとされる」
「サザエは普通種なのに、外国産の別種の学名が使われてきたため、学名がついたのは2017年だった」
・たまに大発生して、その時だけ普通種のようになることがある。その時、その天敵も増えて「普通種」のようになる。
普通種を変化させた要因
普通種の状況を変化させた3つの要因があるという。
1)開発による多様な環境の消失と均質化(山地、里山、水田、畑などが、住宅や商工業地へ)
2)新たな外来種の侵入
3)里山に残された林の遷移が進んだ(長期的撹乱のない林が増加。里山林に生息していた生き物の一部が減少、撹乱のない林に生息する生き物が増加)
次のような考察も面白いです。
・環境が均質化すると、普通種も均質化する。どこへ行っても、普通種も同じものばかりになる。
「均質化した環境とそうでない環境は、それぞれにすむ生き物の姿にきちんと目を向けないと、一見どちらも同じように見えてしまうかもしれません」
・里山や古民家など適度に人の手が入っていた環境だからこそ、普通種として繁栄できていた種もある。そのような普通種は人間の活動の変化によって減少している。
・一見すると生き物がたくさんいても、その内訳を知ることで、外来種だったり、均質化しているということもよくある。よく「豊かな自然」というが、身近な自然が本当に豊かなのかは冷静に考える必要がある。
・普通種は古くからよく研究がされてきたので研究されつくされていると思われるかもしれないが、実はそうではない。
・普通種を調べることで、その地域の環境の特徴が浮かび上がってくる。
「普通種はその環境を評価するにはとても役に立つ。珍しい生きものでは偶発的な記録となってしまう」
すばらしい企画展でした
均質化の議論は重要だと思いました。
本来は地域それぞれの「普通種」があることが豊かなのだということですね。
民家や里山など、人の手が入っている環境も自然を豊かにしていた側面があるという話は奥が深い話だと思います。
神奈川県の研究、同博物館の学芸員の研究が多く含まれていて、身近に感じられる内容でした。
展示してある標本は100%が生命の星・地球博物館の所蔵品だそうです。
博物館での研究や標本保存の重要性もよく伝わってきました。
「普通種」をめぐってあらゆる視点から考察されていて、とても熱心に作られた企画展だと思いました。
学芸員の方々ありがとうございました。
「普通種べいべ〜」にも役立てていきます。
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